文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/10/14
どんな物語?(ネタバレなし)
優等生の「ぼく」が進学先に選んだのは、人種も家庭の経済状況もばらばらな生徒が集まる「元・底辺中学校」でした。イギリスの地方都市に暮らす著者ブレイディみかこが、思春期に入った息子の学校生活と、親子の会話をつづったノンフィクションです。
差別的な言葉を口にする同級生、貧しさを抱えた友だち、自分の性のあり方に悩む少年。毎日のように起きる出来事に、「ぼく」と母ちゃんは一緒に悩み、話し合いながら向き合っていきます。Yahoo!ニュース 本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞を受賞したベストセラーの文庫版です。
こんな人に
多様性という言葉を、具体的な人の顔が見える形で考えたい人に。思春期の子どもとの会話に悩んでいる親や、イギリスの学校や移民社会の実情に関心がある人にも。ふだんノンフィクションを読まない人でも、親子の物語として気軽に楽しめます。
読みどころ
- 差別、貧困、ジェンダーといった重いテーマが、中学生の日常の出来事として語られる。問題が別々にではなく、ひとつの教室のなかで重なりあって起きる現実が生々しい。
- エンパシーを「自分で誰かの靴を履いてみること」と言い表した息子の答えは、立場の違う相手とどう向き合うかを考える手がかりとして、多くの読者の心に残った。
- 母ちゃんと息子の会話は、親が教えるというより、ともに悩む対等なやりとり。子どものほうがはっとする言葉を返す場面も多く、子育て中の親にも響く。
- パンクな母ちゃんの軽快で率直な語り口のおかげで、深刻な話題でも重くなりすぎず、ユーモアを交えて読み進められる。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、結末を知ってから読みたい人向けです。
「ぼく」の学校には、移民や非白人を見下す言葉をくり返して孤立している少年ダニエルがいます。ダニエルは「ぼく」にもひどい言葉を投げつけますが、二人は音楽という共通の好みでつながり、友だちでありつづけます。差別は許さないけれど、相手を丸ごと切り捨てもしない。その難しさが、親子の会話を通して描かれます。
公民(シティズンシップ)の試験で「エンパシーとは何か」と問われた「ぼく」は、「自分で誰かの靴を履いてみること」と答えます。かわいそうだと感じるシンパシーとは違う、自分と立場や意見の違う人の気持ちを想像する力。この考え方が本全体を貫く軸になります。
ほかにも、家が貧しくて万引きをしてしまう子、ジェンダーに悩むサッカー好きの少年、中国系の生徒会長など、さまざまな同級生が登場します。母の国・日本を訪ねれば「ぼく」は「ガイジン」と呼ばれ、イギリスでは東洋人への差別語を浴びる。どちらにいても半分よそ者である自分を、「ぼく」はノートに「イエローでホワイトで、ちょっとブルー」と書きつけていました。怒りの色だと思っていたブルーが、悲しみや沈んだ気分を表すと先生から教わったころのことです。
最終章のタイトルは「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン」。迷いながら成長していく息子の変化が、色の言いかえにこめられています。
読んだあとに考えたいこと
- 自分と意見の違う人や苦手な人の「靴」を、最近履いてみようとしたことはあるだろうか。
- 差別的なことを言う人を、その一面だけで「その人のすべて」だと決めつけていないだろうか。
- 自分の職場や地域には、見えにくい格差や分断はないだろうか。
読むときのコツ
16の章はそれぞれひとつの出来事を中心にまとまっていて、少しずつ読んでも話を見失いません。イギリスの学校制度など耳慣れない話も出てきますが、文中でかみくだいて説明されています。同級生の名前が多いので、気になる子をメモしながら読むと楽です。
次に読むなら
13歳になった「ぼく」のその後は、続編の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』で読めます。本書で注目されたエンパシーについて、著者がさらに考えを深めたのが『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』(文藝春秋)。本書の副読本のようにして読むと、あの試験の答えの奥行きが見えてきます。
読んだ人の感想
読みこみ中…
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あらすじ・要約などの文章は AI(Claude)が書いたもので、内容や主張、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。読了時間・難しさもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。

