文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/09/29
どんなお話?(ネタバレなし)
出版社・玄武書房の営業部で、まったく役に立っていなかった青年・馬締光也。人づきあいは苦手なのに、言葉の意味を考えだすと止まらない彼の才能を見ぬいたのは、定年を前にしたベテラン辞書編集者の荒木でした。
辞書編集部に引きぬかれた馬締が取りくむのは、新しい国語辞典『大渡海』。何十万もの言葉を集め、ひとつずつ意味を書き、完成までに十年以上かかることもあるという、気の遠くなるような仕事です。
不器用な人たちが、言葉という海をわたるための「舟」を編んでいく。地味なのに、胸が熱くなるお仕事小説です。
こんな子におすすめ
言葉の意味や語源を調べるのが好きな人、ひとつのことにこつこつ打ちこむ人に。将来どんな仕事をしたいかまだ見えない高校生にとっては、「地味に見える仕事の奥深さ」を知る一冊になります。人づきあいが苦手でも、自分の得意なことで誰かとつながれる――そんな希望を感じたい人にも。
読みどころ
- 「右」をどう説明するか、「恋」をどう定義するか。辞書の語釈を考える場面が何度も出てきて、ふだん何気なく使う言葉が急にむずかしく、おもしろく見えてきます。
- 辞書に使う紙の手ざわりや、何度も重ねられる校正作業など、本ができるまでの裏側が具体的に描かれます。お仕事小説として、職人の世界をのぞく楽しさがあります。
- 章ごとに語り手が変わり、馬締をそばで見る同僚たちの目線から物語が進みます。変わり者の馬締が、周りの人を少しずつ動かしていく様子が味わい深いです。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、読み聞かせの前に内容を確かめたい保護者の方向けです。
馬締は、日本語研究に人生をささげる老学者・松本先生、軽くて調子のいい同僚の西岡、事務の佐々木さんとともに『大渡海』づくりに打ちこみます。下宿先の大家タケおばあさんの孫で、板前の修業をしている香具矢に恋をした馬締は、毛筆で何枚にもわたる恋文を書き、周囲をあきれさせながらも思いを受けいれてもらいます。
会社は採算のとれない辞書づくりに消極的で、企画はたびたび中止の危機にさらされます。はじめは辞書に冷めていた西岡も、やがて自分なりのやり方で計画を守ろうとし、宣伝部へ異動する前に、後任のための引き継ぎ資料を残していきます。
十数年後、ファッション誌から異動してきた岸辺みどりが加わり、辞書にふさわしい紙選びが進みます。校正の途中で、ある言葉が抜け落ちていることが見つかり、編集部は総出ですべての見出し語を点検しなおします。完成を目前にして松本先生は病に倒れ、刊行を見届けることなく亡くなります。『大渡海』の完成を祝う会で、馬締は先生の思いを胸に、言葉の海を渡る舟が完成したことをかみしめるのでした。
読んだあとに話したいこと
- もし辞書をつくるとしたら、どの言葉の説明がいちばんむずかしそう?
- 西岡さんは辞書づくりに向いていなかったのかな。彼の役割は何だったと思う?
- 十年以上かけてひとつのことをやりとげるとしたら、何に取りくんでみたい?
おうちの方へ
辞書づくりに情熱をかける人々を描いた本屋大賞受賞作です。刺激の強い場面はほとんどなく、中学生から安心して読めます。恋愛の場面はありますが、ほのぼのとしたものです。後半で重要人物が病気で亡くなり、しんみりする場面があります。言葉の意味を考える楽しさが伝わり、国語や辞書が好きになるきっかけにも。
次に読むなら
ピアノの調律師として成長する青年を描いた『羊と鋼の森』は、同じく静かな職人の世界を舞台にしたお仕事小説で、舟を編むと並べて読みたい一冊です。数学者と家政婦の交流を描く『博士の愛した数式』は、ひとつの学問を愛する人のまっすぐさが胸を打ちます。同じ三浦しをんの『風が強く吹いている』は、打って変わって熱いスポーツ青春小説です。
読んだ人の感想
読みこみ中…
この本が好きなら
あらすじなどの文章は AI(Claude)が書いたもので、登場人物や出来事、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。対象の目安・ボリュームもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。





