文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/10/03
どんなお話?(ネタバレなし)
家政婦の「私」が新しく派遣されたのは、交通事故の後遺症で、記憶が80分しかもたない元数学者の「博士」の家でした。博士は毎朝、私のことを忘れてしまい、そのたびに靴のサイズや電話番号をたずねては、その数字にひそむふしぎな性質を語りはじめます。
やがて、私の10歳の息子も学校帰りに博士の家へ通うようになります。博士は彼の頭の形から「ルート」というあだ名をつけ、子どもを心から大切にあつかいました。数字と野球を通して、三人のあいだに、ささやかで特別な時間が流れはじめます。
こんな子におすすめ
数学が苦手、あるいは逆に大好き、どちらの子にもすすめたい一冊です。数字の世界が、じつは美しくて人の心とつながっているものだと感じさせてくれます。野球が好きな子や、祖父母など年の離れた人との関係を大切にしている子にも、深く響くはずです。
読みどころ
- 博士が数字について語る場面は、どれも発見の喜びに満ちています。友愛数や完全数といった言葉を知らなくても、博士の目を通すと数字が生きもののように見えてきます。
- 毎朝「はじめまして」から始まる関係なのに、三人のあいだには確かに積みかさなっていくものがあります。記憶とは何か、人と人をつなぐものは何かを、静かに考えさせます。
- 子どもを何よりも大切にする博士の態度。ルートの小さな質問にも本気で向きあう姿に、大人が子どもを尊重することの意味が表れています。
- 博士が大切にする江夏豊と阪神タイガースの話題が、数学と同じくらい物語を彩ります。記憶の止まった博士と、現在のプロ野球を知る親子のすれちがいが、ほほえましくも切ない場面を生んでいます。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、読み聞かせの前に内容を確かめたい保護者の方向けです。
博士は背広に何枚ものメモを留め、忘れてはいけないことを書きとめて暮らしていました。私とルートは、友愛数や完全数、素数の話に夢中になり、博士が愛する阪神タイガースの江夏豊の背番号28が完全数であることを教わります。けれど博士の中の江夏は、事故の前のまま、いまも現役の投手でした。
一時期、母屋に住む博士の義姉との行きちがいから私は担当をはずされますが、ルートが博士を訪ねたことをきっかけに、ある数式が書かれたメモがとりなしとなって、私はふたたび博士の家で働けることになります。博士と義姉とのあいだには、若いころの秘められた関係があったことも、それとなく明かされます。
三人は野球観戦に出かけ、ルートの誕生日を祝う準備をします。私とルートは、博士のために江夏の野球カードを苦労して探しあてました。しかし博士の記憶はしだいに80分ももたなくなり、博士は施設で暮らすことになります。
その後も私とルートは博士を訪ねつづけ、時がたち、大人になったルートは数学の教師になる道を選びます。博士が胸にかけた江夏のカードとともに、三人の日々は私の記憶の中で輝きつづけます。
読んだあとに話したいこと
- 博士はルートに、どうしてあんなにやさしかったんだろう?
- 記憶が80分しかもたなくても、心に残るものはあると思う?
- 自分の誕生日や背番号の数字を、博士みたいに調べてみない?
おうちの方へ
記憶障害をもつ老数学者と、家政婦親子の交流を描いた本屋大賞受賞作。数学の話題は多いものの、計算ができなくても楽しめるように書かれています。老いや病気、別れの気配が静かにただよい、大人の恋愛を匂わせる場面もわずかにあります。ひとり読みは中学生が目安。数学ぎらいの子の見方が変わるかもしれません。
次に読むなら
年の離れた人と子どもの心の交流なら、少年たちがひとり暮らしの老人を見張るうちに親しくなる『夏の庭』が近い読み心地です。祖母と孫の暮らしを描いた『西の魔女が死んだ』も、別れを静かに描く点で通じます。同じ本屋大賞受賞作で高校生の一夜を描く『夜のピクニック』へ進むのもおすすめです。
読んだ人の感想
読みこみ中…
この本が好きなら
あらすじなどの文章は AI(Claude)が書いたもので、登場人物や出来事、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。対象の目安・ボリュームもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。





