文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/09/29
どんなお話?(ネタバレなし)
村の牧人メロスは、妹の結婚式の買いものに町へ出て、王が人を信じられず、次々と人を処刑していると知ります。激しく怒ったメロスは、王の城に乗りこんで捕らえられてしまいます。
処刑を前に、メロスはたった一つの願いを口にします。妹の結婚式をあげるため、三日だけ待ってほしい。その身代わりに、町にいる親友を人質に置いていく、と。王は、どうせ戻ってこないだろうと笑いながら、それを許しました。
表題作のほか、『富嶽百景』『女生徒』『駈込み訴え』『東京八景』など、太宰治が結婚後の落ちついた数年間に書いた短編を中心に、9編を収めた作品集です。
こんな子におすすめ
教科書で『走れメロス』を読んで、太宰治という作家をもっと知りたくなった子に。友情と信頼をまっすぐに描く表題作から、少女の繊細な心を描く『女生徒』まで、一冊で作風の幅に驚くはずです。短い作品が多いので、長編を読む時間がとれない子にも手にとりやすい作品集です。
読みどころ
- たたみかけるような文章のリズム。メロスが走る場面では、短い文が次々と重なり、読んでいるこちらまで息が切れそうな疾走感が生まれます。
- 英雄のように見えるメロスが、途中で弱音を吐き、あきらめかける場面。完璧でない主人公だからこそ、最後の走りに心が動かされます。
- 『女生徒』の独白体は、一人の少女の朝から夜までの気分の移り変わりを、まるで日記のように描いています。男性作家が書いたとは思えない繊細さが魅力です。
- 『駈込み訴え』は、師を裏切ろうとする弟子が一気にまくしたてる独白だけでできた作品です。愛情と憎しみが入りまじる語りの迫力は、『走れメロス』の友情と正反対の角度から人の心を描いています。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、読み聞かせの前に内容を確かめたい保護者の方向けです。
親友セリヌンティウスを人質に残し、メロスは村へ走って妹の結婚式をすませます。翌朝、約束の日没までに町へ戻るため、メロスは再び走りだしました。ところが、大雨で川はあふれ、橋は流されていました。メロスは濁流を泳ぎきり、つづいて山賊に襲われますが、それも打ち倒します。
しかし疲れきったメロスは倒れこみ、もう間にあわない、自分はよくやったのだと、いったんはあきらめかけてしまいます。そのとき、岩の間から湧く清水を口にして力を取りもどし、ふたたび全力で走りはじめました。
日没寸前、メロスは刑場に飛びこみ、友の命を救います。二人は、一度だけ互いを疑ったことを打ち明けて頬を殴りあい、抱きあって泣きました。その姿を見た王は心を動かされ、自分も仲間に入れてほしいと願うのでした。
ほかに、山の茶屋に滞在して富士と向きあう『富嶽百景』、少女の一日の揺れる心を独白で描く『女生徒』、裏切り者として知られる弟子が師への愛憎を語る『駈込み訴え』、作家が東京で過ごした十年をふりかえる『東京八景』などが収められています。
読んだあとに話したいこと
- メロスが途中であきらめかけたとき、どんな気持ちだったと思う?
- 王はなぜ、人を信じられなくなってしまったんだろう?
- 友だちを一度でも疑ったら、その友情は終わりだと思う?
おうちの方へ
表題作は国語の教科書でもおなじみで、中学生なら短時間で読めます。ほかの短編には、作者自身の心中未遂や薬物中毒、自殺未遂をふりかえる『東京八景』など、大人向けの重い内容も含まれます。まず表題作と『富嶽百景』『女生徒』から読むのがおすすめ。ひとり読みは中学生〜高校生が目安です。
次に読むなら
友情と約束の重さを考えるなら、友を裏切ってしまった少年の後悔を描く『君たちはどう生きるか』がぴったりです。同じく教科書でおなじみの文豪の作品なら、夏目漱石『坊っちゃん』は痛快で、長編の入門に向いています。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』は、友情と自己犠牲を幻想的に描いた、短めの名作です。
読んだ人の感想
読みこみ中…
この本が好きなら
あらすじなどの文章は AI(Claude)が書いたもので、登場人物や出来事、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。対象の目安・ボリュームもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。





