文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/09/29
どんなお話?(ネタバレなし)
北高には「歩行祭」という伝統行事があります。全校生徒が朝から翌朝まで、一昼夜かけて80キロの道のりを歩きとおすのです。前半はクラスごとに列をつくって歩き、夜の仮眠のあとは、好きな相手と自由に歩くことができます。
高校3年生の甲田貴子にとって、これが最後の歩行祭。貴子は、誰にも打ち明けたことのない秘密を胸に、ひとつの小さな賭けをしていました。同じクラスの西脇融に、この歩行祭のあいだに話しかけること。ただ歩くだけの一日が、忘れられない特別な夜に変わっていきます。
こんな子におすすめ
友だちと夜通し語りあうような時間にあこがれる子、にぎやかな事件よりも人の気持ちの動きをじっくり読みたい子に。高校生活を少し先取りしてみたい中学生にも向いています。長い距離を歩く疲れや夜の空気の描写が細かいので、遠足や合宿の思い出がある子なら、その感覚ごと楽しめます。
読みどころ
- 物語のほとんどが「歩いているだけ」なのに、ページをめくる手が止まりません。疲れ、眠気、足の痛みとともに、登場人物たちの本音が少しずつこぼれていく構成が見事です。
- 語り手が貴子と融のあいだで入れかわり、同じ出来事がちがう角度から見えてきます。二人が互いをどう見ているかのすれちがいが、もどかしくも切ないです。
- 美和子や忍をはじめとする友人たちが、とても魅力的。主役二人を思いやる彼らの存在が、この物語を温かい友情の物語にもしています。
- 団体歩行から自由歩行へ、昼の明るさから深い夜、そして朝焼けへ。時間とともに移り変わる景色と、生徒たちの疲れや高揚が重なり、読者も一緒に80キロを歩いているような気分になります。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、読み聞かせの前に内容を確かめたい保護者の方向けです。
貴子と融は、同じ父親をもつ異母きょうだいでした。父が融の母と家庭を持ちながら貴子の母とのあいだにも子をもうけたため、二人は同い年で、しかも同じ高校の同じクラスになってしまったのです。融は貴子の存在を疎ましく思い、二人は一度も口をきいたことがありませんでした。
歩行祭が進むにつれ、親友の美和子や融の友人の忍たちは、それぞれに二人の関係を誤解したり、気づいたりしながら、見えないところで二人を近づけようとします。アメリカへ転校した貴子の友人・杏奈がほのめかしていた「おまじない」も、思わぬ形で歩行祭に影響をあたえます。
夜が深まり、疲れと足の痛みで誰もが無口になっていくなか、ついに貴子と融は並んで歩き、言葉をかわします。互いに抱えてきた複雑な思いを少しずつ口にするうちに、長いあいだのわだかまりはほどけていきました。
朝日の中でゴールをめざす二人のそばには、見守ってきた友人たちがいます。ただ歩くだけの一夜が、それぞれにとってかけがえのない青春の記憶となって、物語は幕を閉じます。
読んだあとに話したいこと
- もし一晩かけて友だちと歩くとしたら、どんな話をしたい?
- 貴子の「賭け」は、どうしてそんなに勇気が必要だったんだろう?
- 言葉にしないまま、わかりあえることはあると思う?
おうちの方へ
80キロを歩く一昼夜だけを描いた、本屋大賞受賞の青春小説です。親の不倫による異母きょうだいという事情が物語の中心にありますが、描き方は落ちついています。事件らしい事件は少なく、会話と心の動きをじっくり味わう作品なので、ひとり読みは中学生〜高校生が目安。高校生活を思いえがくきっかけにも。
次に読むなら
高校の部活で仲間と走る日々を描いた『一瞬の風になれ』は、同じく本屋大賞受賞の青春小説で、より熱く明るい読み心地です。家族のかくれた事情を他人の目で見なおしていく『カラフル』は、中学生の視点から家族を描いています。同じ本屋大賞の『博士の愛した数式』とあわせて、受賞作を読みくらべるのもおすすめです。
読んだ人の感想
読みこみ中…
この本が好きなら
あらすじなどの文章は AI(Claude)が書いたもので、登場人物や出来事、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。対象の目安・ボリュームもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。





