文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/09/29
どんなお話?(ネタバレなし)
平安時代の京都。荒れはてた都の門の下で、主人に暇を出されたひとりの下人が雨がやむのを待っています。このまま飢え死にするか、盗人になるか。決めかねたまま門の楼に上った下人が、暗がりのなかで目にしたものとは――。表題作「羅生門」をはじめ、『今昔物語』などの古い説話に材をとった短編を集めた一冊です。
長すぎる鼻に悩む高僧の「鼻」、芋粥を腹いっぱい食べることを夢見る下級役人の「芋粥」など、どれも短く、けれど読み終えたあとに人間の心のふしぎさが残ります。王朝の世界を舞台にした、芥川の初期の代表作がそろっています。
こんな子におすすめ
教科書で「羅生門」を読んで、ほかの作品も気になった人に。一編が短いので、長編が苦手でも一話ずつ読みすすめられます。「人はどこまで自分の都合で善悪を決めるのか」「他人の不幸をどこかで望んでしまう気持ち」など、人間のずるさや弱さを冷静に見つめる物語が好きな人に向いています。
読みどころ
- 「羅生門」は、下人の心が「盗人にはなれない」から「なってもいい」へと変わっていく一瞬を、行動と理屈だけで鮮やかに描きます。短いのに、読むたびに解釈が変わる作品です。
- 「鼻」で描かれる、他人が不幸から抜けだすとかえって面白くない、という傍観者の心理は、今の学校や SNS でも思いあたる場面がありそうです。
- 古典の説話をもとにしながら、登場人物の心の内側を近代的な言葉で掘りさげているのが芥川の持ち味です。元になった『今昔物語』と読みくらべるのもおすすめ。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、読み聞かせの前に内容を確かめたい保護者の方向けです。
「羅生門」の下人は、楼の上で、死体の髪を一本ずつ抜いている老婆を見つけます。怒りにかられて老婆をとらえると、老婆は、かつらを作るためだ、この女も生きるために悪いことをしていたのだから許されるはずだ、と言いわけします。それを聞いた下人は、自分も生きるためなら同じことが許されると考え、老婆の着物をはぎとって闇のなかへ消えていきます。
「鼻」の禅智内供は、あごの下まで垂れる鼻をひそかに気にしています。弟子が医者から教わった方法で鼻を短くしてもらいますが、周囲の人々はかえって以前よりも笑うようになり、内供は不機嫌になります。ある朝、鼻がもとの長さに戻っていたとき、内供はむしろほっとするのでした。
「芋粥」の五位は、ある貴族に誘われて遠くの屋敷へ連れていかれ、大鍋いっぱいの芋粥をふるまわれます。けれど夢がかなった瞬間、食欲はすっかり失せてしまいます。このほか「運」「袈裟と盛遠」「邪宗門」「好色」「俊寛」を収めます。
読んだあとに話したいこと
- 下人が最後に選んだ行動は、許されると思う? 老婆の言い分とどこが同じで、どこがちがう?
- 内供は、鼻が短くなったのにどうして幸せになれなかったんだろう?
- 夢がかなう前と後で、気持ちが変わってしまった経験はある?
おうちの方へ
高校1年の国語で学ぶことが多い「羅生門」を収めた短編集です。死体、盗み、飢えといった場面が出てきますが、残酷な描写を目的にしたものではありません。「好色」「袈裟と盛遠」には大人の恋愛や不倫、殺人の計画も描かれます。文語まじりの語句には巻末の注解があり、中学生の背伸び読みにも向きます。
次に読むなら
同じく教科書の定番である夏目漱石『こころ』は、人間のエゴイズムを長編でじっくり描いた作品で、短編の切れ味との対比が楽しめます。太宰治『走れメロス』は、人を信じることを真正面から描いた短編で、「羅生門」の下人とは正反対の選択が描かれます。芥川を続けて読むなら、『地獄変』や『蜘蛛の糸・杜子春』もおすすめです。
読んだ人の感想
読みこみ中…
この本が好きなら
あらすじなどの文章は AI(Claude)が書いたもので、登場人物や出来事、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。対象の目安・ボリュームもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。





