文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/10/03
どんなお話?(ネタバレなし)
地方の県立高校。バレー部のキャプテンで、だれからも一目置かれている桐島が、理由も言わずに部活をやめた――。そのうわさが校内に広がった週、何人かの生徒の毎日に、小さなさざ波が立ちはじめます。
バレー部で補欠だった部員、ブラスバンド部の女子、目立たない映画部の男子、ソフトボール部の女子、野球部に籍だけ置いている男子。部活も、クラスでの立ち位置もばらばらの彼らが、それぞれの視点で語る高校生活。
教室のなかの見えない「上下」や、言葉にできない焦りが、驚くほどリアルに描かれた連作短編集です。
こんな子におすすめ
クラスのなかで自分がどの位置にいるのか、つい気にしてしまう人に。部活に打ちこんでいる人も、何にも本気になれない人も、この本のどこかに自分がいると感じるはずです。大事件は起きないけれど、日常の小さな感情の動きを正確に言葉にしてくれる小説が好きな人に。
読みどころ
- タイトルにもなっている桐島は、最後まで一度も語り手として出てきません。その「不在」が、ほかの生徒たちの本音を浮かびあがらせるしかけになっています。
- 同じ出来事が別の生徒の目からくりかえし描かれるので、ある人にとっての大事件が、別の人にはほとんど見えていないことがわかります。
- 若い作者ならではの、今どきの話し言葉やメールのやりとりがリアルで、教室の空気がそのまま閉じこめられているようです。
ここから先は物語の結末に触れています。読み終わった人や、読み聞かせの前に内容を確かめたい保護者の方向けです。
章ごとに語り手が変わり、桐島本人は一度も登場しません。バレー部の小泉風助は、桐島の代わりにリベロとして試合に出ることになり、レギュラーになれた喜びと、自分が「代わり」でしかない複雑さのあいだで揺れます。ブラスバンド部の沢島亜矢は、ひそかに思いを寄せる相手を、部活の練習の合間にそっと見つめています。
映画部の前田涼也は、クラスの目立つグループから見下されていると感じながらも、好きな映画を撮ることに打ちこみます。ソフトボール部の宮部実果は、事故で亡くした娘の面影を自分に重ねてくる母との暮らしを抱えながら、バレー部の副キャプテンである彼氏とのすれちがいに揺れています。
野球部をさぼりつづけている菊池宏樹は、顔もよく運動もできて、いわゆる「上」のグループにいる生徒。けれど、桐島がいなくなったことをきっかけに、自分には夢中になれるものが何もないことに気づきます。本気で映画を撮る前田たちの姿に、宏樹は言いようのない気持ちを抱き、自分もまだやり直せるのではないかと思いはじめます。文庫版には、バドミントン部の東原かすみの中学時代を描いた短編「東原かすみ 〜14歳〜」も加えられています。
読んだあとに話したいこと
- 5人の語り手のなかで、いちばん気持ちがわかるのはだれ?
- クラスの「上」と「下」って、本当にあるのかな。だれが決めているんだと思う?
- 夢中になれるものがあることと、クラスで目立つことは、どちらが大事?
おうちの方へ
高校生の人間関係と、教室の中の見えない序列(スクールカースト)を描いた青春小説です。交際や性をにおわせる会話、複雑な家庭の事情が出てきます。暴力的な場面はありません。高校生本人が読むと、思いあたる場面が多く胸がざわつくかもしれません。映画版との比較も話のきっかけになります。
次に読むなら
高校の伝統行事で一晩じゅう歩きながら、言えずにいた思いに向きあう『夜のピクニック』は、同じく学校の日常を丁寧に描く青春小説です。人との関わりを避けてきた少年が変わっていく『君の膵臓をたべたい』、ひとりの少年の「やりなおし」を通して周りの人の見え方が変わる『カラフル』もおすすめ。熱く打ちこむ青春を読みたくなったら『風が強く吹いている』へ。
読んだ人の感想
読みこみ中…
この本が好きなら
あらすじなどの文章は AI(Claude)が書いたもので、登場人物や出来事、結末などが実際の本と一部異なる可能性があります。対象の目安・ボリュームもブックリンカー編集部による目安です。お気づきの点はお問い合わせからお知らせください。書誌情報は openBD・国立国会図書館サーチ・Open Library・版元ドットコムを参照しています。





