日本語のシリーズ
バッテリー
全6巻(完結) 本編の完結後に出た続編『ラスト・イニング』は数に入れていません
作:あさのあつこ
文:ブックリンカー編集部 / 更新日:2026/10/17
『バッテリー』は、あさのあつこが1996年から2005年にかけて書きついだ全6巻の青春小説です。中学入学をひかえた春、ピッチャーの原田巧は家族とともに岡山県の地方都市・新田に引っこしてきます。そこで出会うのが、巧の球を受けたいと願うキャッチャーの永倉豪。物語は、この二人が「バッテリー」を組んでから中学1年の1年間を、6冊かけてじっくりと追いかけます。単行本は教育画劇から刊行され、現在は角川文庫などで読めます。
野球小説と聞くと、試合の勝ち負けや練習の努力を思い浮かべるかもしれません。けれどこの作品の中心にあるのは、自分の球の力を信じきり、大人にも先輩にも一歩もゆずらない巧という少年の、とがった心そのものです。巧は決して「いい子」の主人公ではありません。その不器用さに、いらだちながらも目が離せなくなるところに、この物語の力があります。病弱な弟の青波、かつて高校野球の監督だった祖父、息子を理解しきれない両親など、家族の描写も細やかです。
巻が進むにつれて、中学の野球部という集団のなかで、巧と豪の関係は何度も揺さぶられます。監督や上級生との衝突、部の活動をめぐる事件、そして強豪校の打者たちとの出会い。後半の巻では、ライバル校の選手の視点も増え、巧をまわりの人間がどう見ているのかが立体的に描かれていきます。試合の場面は意外なほど少なく、勝敗よりも「この球を投げる意味」が問われつづけます。
暴力的な描写は多くありませんが、上級生による部員への暴行事件が物語の大きな転機として描かれます。また、登場人物どうしの言葉づかいはかなりきつく、大人への反発も強めです。思春期の心をそのまま描いているからこそで、中学生になってから読み返すと、1回目とはちがう人物に共感できるはずです。
読む順番のコツ
必ず1巻から順番に読みましょう。6冊で中学1年の春から次の春までを一続きで描いているため、途中の巻から読むと人間関係がつかめません。1巻は入学前の春休みの話で、野球部の物語が本格的に動き出すのは2巻からです。1巻で巧の性格になじめなくても、2巻以降で見え方が変わってくるので、少し先まで読んでみてください。完結後に出た『ラスト・イニング』は、本編を読み終えてからどうぞ。
こんな子に
小学5年生〜中学生。野球をしている子はもちろん、ルールを知らなくても、自分の気持ちをうまく言葉にできずにいる子や、友だちとの関係に悩む子に。
読む順番
刊行順。本編は全6巻で、『ラスト・イニング』は本編完結後に出た続編です。巻数の表記は文庫版にならっています。
- 1

- 2

- 3
バッテリーIII
部に起きた出来事をきっかけに、強豪校との試合が持ちあがる。
- 4
バッテリーIV
巧と豪のあいだに、はじめて大きな亀裂が入る。
- 5
バッテリーV
冬の季節。ライバル校の選手たちの視点が増えていく。
- 6
バッテリーVI
本編の完結巻。1年間の物語がひとつの試合へ向かう。
- 7
ラスト・イニング
本編の後日談。ライバル校の選手の視点から描かれる。
当サイトで紹介している巻は、タイトルからあらすじ・対象の目安のページに移れます。ほかの巻も紹介してほしいときは本のリクエストへ。
読み終えたら、次の1冊
DIVE!!一つの競技に打ちこむ少年たちの心の揺れに引きこまれた子に。飛込み競技でオリンピックをめざす中高生の物語で、才能への嫉妬や仲間との距離が、3人の選手それぞれの目から描かれます。上下巻で、バッテリーより一段大人びた青春小説です。
一瞬の風になれ相棒との関係や、チームのなかで自分の役割を見つけていく話が好きな子に。高校の陸上部で短距離とリレーに打ちこむ3年間を、3部作で描きます。試合の場面が多く、読後感はバッテリーより明るめ。中学生からが目安です。
風が強く吹いているとがった天才と、その才能を信じて支える仲間の物語にひかれた子に。寄せ集めの大学生10人が箱根駅伝に挑む話で、天才ランナーの走がチームのなかで変わっていきます。670ページの大作なので、中学生以上で長編に慣れてから。
よくある質問
- Q. 何年生から読めますか?
- 角川文庫版は1冊250ページ前後です。会話が多くテンポよく読めますが、言葉にならない気持ちの揺れを追う物語なので、ひとり読みは小学5・6年生からが目安です。主人公と同じ中学1年生前後で読むと巧や豪の気持ちが身近に感じられ、中学・高校で読み返すと、大人の登場人物の見え方も変わってきます。
- Q. 野球のルールを知らなくても楽しめますか?
- 楽しめます。試合の場面は意外なほど少なく、ルールのくわしい説明もほとんど出てきません。物語の中心は、巧と豪、家族、野球部の仲間や大人たちとの関係です。ピッチャーが投げ、キャッチャーがその球を受けて二人で組む、ということさえわかっていれば十分で、野球をしない子が夢中になることも多い作品です。
- Q. 全部で何巻ですか?『ラスト・イニング』とは?
- 本編は全6巻で完結しています。『ラスト・イニング』は本編の完結後に出た続編で、ライバル校・横手二中の瑞垣の目から、巧たちとの勝負のその後を描きます。本編の結末を知っている前提で書かれているので、6巻を読み終えてから手にとってください。
- Q. きつい場面や暴力的な描写はありますか?
- 2巻で、上級生が部員に暴力をふるう事件が起き、これが物語の大きな転機になります。くわしく痛々しく描く書き方ではありませんが、登場人物の言葉づかいもきつめで、大人への反発も強く出てきます。上下関係のきびしい部活に入ったばかりの子なら、親子で感想を話すきっかけにもなります。